過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(IBS)とは、腸が慢性的に過敏な状態へと陥って、突然の下痢や腹痛、便秘などの症状が持続する病気です。検査をしても身体的には特別な異常が見つからないという特徴があり、その多くにはストレスが大きく関係していると考えられています。 生命に危険がおよぶような病気ではありませんが、通勤電車の中などトイレに行けないような状況下で症状が現れることにおびえて暮らさなければならなくなるなど、日常生活に支障をきたすケースも珍しくありません。 ストレス社会とも称される日本では5人に1人の成人がこの病気に悩んでいるといわれ、中でも20~30代の比較的若い世代に多く見られます。

過敏性腸症候群の症状

典型的な症状には下痢や便秘といった便通異常、腹痛、膨満感、ガスの頻出などが挙げられます。特に腹痛には急激に痛みがさし込む場合と鈍痛が持続する場合があり、いずれの場合も排便すると一時的に治まることが多いのが特徴です。さらに過敏性腸症候群は、便意が急激に襲いくる下痢型、便通が過度に滞る便秘型、下痢と便秘が交互に繰り返される交代型、そしていずれにも該当しない分類不能型という4つのタイプに分けられ、男性にはこのうちの下痢型が、女性には便秘型がそれぞれ多いとされています。 また、こうした症状に加えて、自律神経の失調に伴う頭痛、めまい、肩こりや、精神面の落ち込み、イライラ、不眠などといった症状が現れることもあります。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の諸症状は基本的には腸の運動異常によって生じますが、そうした症状が特に精神的な緊張や不安などに際して悪化する傾向があることから、その多くにはストレスが大きく関係していると考えられています。腸は第2の脳と呼ばれることもあるほど脳と密接に影響をおよぼし合う関係を有しており、脳で感じた緊張や不安が自律神経を通して腸に刺激を与え、それによって生じた腸の症状が再び脳に不安や緊張を与えるという悪循環に陥っている可能性があります。

なりやすい人

ストレスとの関係が指摘されている通り、ストレス耐性の低い人、ストレスにさらされる機会の多い人がかかりやすいとされている病気です。さらに、そうしたことに対する悩みを1人で抱え込みがちな方や、うつの傾向がある人などもかかりやすいとされています。 また、仕事や学業などの忙しさから生活リズムが乱れがちな人は気が付かないうちに自律神経を失調しやすく、それにより発症するようなこともあります。

過敏性腸症候群の診断

各種検査によって類似症状を有する他の病気への疑いが否定され、なおかつ腸に特別な異常が見つからなかった場合、自覚症状を基に診断が行われることになります。そのための方法として、現在ではローマ基準と呼ばれる世界的な基準が存在しており、基本的にはこの基準が示す条件に該当する場合に過敏性腸症候群との診断が下されます。
具体的にローマ基準における過敏性腸症候群とは、腹痛または腹部不快感が直近の1ヶ月間で最低3日以上生じ、なおかつ以下に挙げる3つの条件のうち2つ以上に該当するものと定義されています。

  • 排便によって症状が改善する
  • 排便頻度の変化に伴って症状が現れる
  • 便の形状の変化に伴って症状が現れる

また、下痢型、便秘型、交代型、分類不能型という分類の仕方も、このローマ基準に準じたものです。

治療

過敏性腸症候群は長期にわたって症状が持続し、残念ながら完治することのあまりない病気です。したがって治療にあたっては、症状を緩和することで病気とうまく付き合っていくことの必要性に対する理解が大切です。そのためには、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善指導によって長期的な観点から治療を受けることが重要になります。
その生活習慣指導においては、生活の不規則さや疲労の蓄積、精神的な抑圧などストレスをもたらしていると考えられる環境があれば、その改善にいそしみます。また、食事療法としてコーヒー、アルコール、脂っこい食べ物、刺激物などの過剰摂取を避け、こまめな水分補給、食物繊維や乳酸菌を多く含む食べ物の摂取を心がけます。加えて、運動療法として体操や散歩といった適度な運動を習慣づけることで、気分転換やストレス発散を兼ねながら腸の働きを整えます。
一方、生活習慣の指導だけでは十分な効果が得られなかった場合には、症状に応じた薬を服用する薬物療法が用いられます。処方されることの多い主な薬には、便に含まれる水分量を調整して排便しやすい固さをもたらす高分子重合体、消化管の動きを調節する消化管運動調節薬、腸内の乳酸菌を増やす乳酸菌製剤などが挙げられます。加えて、下痢型には腸の運動異常や痛みを抑えるセロトニン受容体拮抗薬が、便秘型には腸の運動を活発にして便を軟らかくする下剤がそれぞれ処方されることもあります。また、こうした薬だけでは十分な効果が得られなかった場合には、抗不安薬や抗うつ薬の処方が検討されることもあります。

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