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2018.04.26

はしか(麻疹)感染にご注意を、でも慌てずに。

沖縄県で「はしか」(麻疹)の流行が確認され、2018年4月現在、感染の広がりが懸念されています。
2016年9月頃に、イベント会場や空港など不特定多数の方が集まる場所での集団感染が報道され、当院でも多くの問い合わせを受けたことが思い出されます。
今回も慌てたり過剰に心配する必要はありませんが、何も知らずに周囲の人に感染させてしまったり重症化しないように、私たちは正しく理解する必要があります。
麻疹の特徴について、まとめてみました。

①麻疹の感染経路
 麻疹がおそれられる理由の一つは、強い感染力です。麻疹は空気感染(飛沫核感染)します。空気感染するのは麻疹、水痘、結核です。一方インフルエンザなどの風邪症状を起こす多くのウイルスは、飛沫感染(咳やくしゃみを近くであびることにより感染)です。飛沫は1-2mで落下しますので、ある程度至近距離でなければ感染しないわけです。しかし空気感染の場合は、長時間空気中を浮遊しますので同じ場所(特に飛行機、電車、バス、などの密閉空間)にいた場合には感染の可能性が高まります。麻疹に対する免疫(抗体)を持っていない方が麻疹ウイルスに感染すると、発症の可能性は90%程度になります。潜伏期は9-12日といわれていますから、感染のタイミングがあって少し経過してから症状が出始めます。

②麻疹の自然経過
麻疹の初期症状は、大体38度台の発熱とカタル症状(咳、鼻水、眼球結膜の充血等)です。これらが数日(約2-4日)続きますが、これらの症状の時には風邪と症状が似ていますので、診断が困難です。その後、口の中に、麻疹に特徴的とされる白い斑点(コプリック斑)が現れます。コプリック斑が出現すると、一旦体温は下がり傾向になります。しかし、すぐに39-40℃近い高熱となり、体に赤い発疹が出始めて全身に広がります。解熱までには約1週間かかります。インフルエンザと比較しても、発熱期間は明らかに長く、大人でもぐったりするほどの熱です。

③麻疹の合併症
麻疹感染者では約3割に何らかの合併症が生ずると言われています。これが麻疹がおそれられる理由の二つ目です。肺炎の合併率は15%程度あり、脳炎の合併率は0.1-0.2%(1,000人に1-2人)と報告されています。もし脳炎になってしまった場合、後遺症を残す確率は、20~40%あると言われています。また、1万人に1人程度が致死的な転帰を取ると言われています。

④麻疹の治療、予防法
現時点では麻疹に対して、特別な治療法はありません。対症療法といって、症状に合わせて解熱剤を使用したり、脱水予防の点滴をして解熱寛解するのを待たねばなりません。予防としてはワクチン接種が有効です。1回の接種で約95%の方が免疫を獲得すると言われています。2006年6月2日以降では、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種制度が始まっています。平成2年4月2日以降に生まれた方は、これまでに2回ワクチンを接種する機会があり、きちんと接種していれば、麻疹にかかる危険性は、かなり低いと言えます。
一方、それより前に生まれた、今の28歳から41歳の人は、ワクチンを接種する機会が1回だけでした。子どものころワクチンを打っていても、免疫が低下している可能性があり、麻疹に最もかかりやすい年代と言えます。
さらにそれより上の年代の方たちは、ワクチンを接種する機会がなく、多くの人は麻疹に自然に感染し、免疫を獲得している可能性が高いです。
麻疹ワクチン、MRワクチンは先述の報道以降、また品薄となってきております。

麻疹流行の報道を見ると、2007年に高校生・大学生を中心に麻疹が流行した時のことが毎回思い出されます。それまで多くの医師は、大人の麻疹を診る機会はほとんどありませんでした。私は当時有名な感染症科の病院で研修をしていましたが、連日麻疹の患者さんが入院され、あまりの高熱にぐったりしている様子に驚き、しかし時期が過ぎるまでは点滴をするしかなかったのを覚えています。その中で当時20歳の大学生が脳炎を起こし、後遺症が残ってしまった経過は今でも忘れることができません。

繰り返しになりますが、麻疹はワクチンで予防ができます。予防接種は自分を守るためだけでなく、感染拡大を予防することで大切な人を守ることにもつながります。麻疹にかかったことがあるかわからない方、ワクチン歴が不確かな方は、抗体検査を受けられるのをお勧めします。保険がきかないため自費診療となりますが、自分に感染のリスクがあるかどうかを、まず知ることからだと思います。

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